緩和ケア・高齢者施設での現状
患者の尊厳を守り、QOL向上のため、英国ではアロマセラピストによるケアが盛んに行われている。ストレスは病気の原因のひとつであり、ストレスが最大になるのは死と向き合う時である。死を受容するプロセスでチャプレンやカウンセラーとともにセラピストが関わっている。15年前、私が訪問したホスピスではソーシャルワーカーに申し出ることで患者と家族に8セッションのケアを提供していた。どれを選ぶかは本人の意思による。カウンセリング、マッサージ、人気があるのはアロマテラピーである。
日本でも緩和ケアの考えが普及し始めているが患者と家族へのケアは充分ではない。患者サイドの意識が高まり、治療法を選ぶ権利や治療法について知識を求めるようになっている。多様なニーズに応えるためには医療関係者だけで行うには限界があり、インフォーマルな資源、専門家を活用する時期にきている。また医療分野への導入は専門職のレベルアップと雇用創生でもある。医療分野での普及には臨床研究と論文発表が必要であり、①精油の効果と有効成分との関係、②セラピストのアプローチの分類と効果の分析である。③香り成分と脳の反応の研究CNVの測定が可能であればさらに個別性に対応した結果が得られるであろう。
かなり困難なプロセスが必要になるが、不眠などテーマを設定し、数名のセラピストのホリスティックなアプローチを分析、使用精油の集計と成分により一定の効果測定が可能になる。これらを丹念に積み重ねていくことで有用性の検証に活用できるであろう。英国では不眠解消に精油を利用し、睡眠薬の使用が劇的に減少した報告がある。地味な臨床でも論文発表によって理解が得られるようになる。
今後、医療費削減は大きな問題であり、米国では解決法の一つとして補完・代替医療の導入が進んでおり、患者の意思で補完・代替医療を選ぶ事例も見受けられる。補完・代替医療者の資格についても、明確な規定により地位が確定している。日本の資格制度と欧米ではかなり様相が違っており、補完・代替医療者も国家資格者あるいはそれに準ずる資格者である。
私はサービスの対価を受領する場合は必ず資格取得が必要であると考えており、日本では「あんまマッサージ指圧師、鍼灸師に関する法律」があるが、制定後の社会変化に対応しておらず、今後この分野の整備が重要である。
今後の可能性
劇的な少子高齢社会を向かえる日本では医療・介護・福祉の分野での人材育成が急務であり、重労働と3Kに近い職場でのバーンアウトの解決が重要である。希望を抱いても報われない、価値を見出せない仕事では優秀な人材は育っていかない。
アロマテラピーなど補完・代替医療を導入することで関係者の負担は軽減できないであろうか。QOLを高め、ADL向上が可能になるのではないだろうか。費用対効果の検証も重要である。サービスを提供する場合でも介護保険の範囲では限界があり、英国のような財団による支援がほとんどない日本では必要と考える利用者が費用負担する以外ないであろう。また、多くの人が関わることで職場の雰囲気や負担が軽減でき、モチベーションを高めることに役立つと考えられる。今後、個別性の高い高齢者施設でのアクティビィティは個々のご要望に合わせた対応が重要になると思われ、この分野での可能性と評価も課題である。
乃木坂グリーンハウスのケア現場での取り組み
英国研修で得た経験をもとに、高齢者施設をはじめ医療機関、知的障害者施設まで実施の場を広げている。
●1997年~
特別養護老人ホーム
職員研修
アロマハンドマッサージの実施
●2005年~
有料老人ホーム・医療機関
英国IFA認定アロマセラピスト訪問サービス(有料)開始
●2011年~
知的障害者施設
介護福祉とアロマテラピー講座修了生、英国IFA認定アロマタッチプラクティショナーコース在校生によるアロマタッチ、アロマハンドマッサージの実施
【知的障害者施設での実施】
非言語コミュニケーションとして「香り」と「タッチング」に可能性を感じ実施に至る。
以下在校生感想、「視覚的理解を助けるために、使用精油の写真を提示することで、言葉による説明に比べ、強く興味をひくことが出来た。オイル使用に拒否感が強いクライアントには、オイルをつけずに軽擦中心に対応する。」
障害者施設は外部との接触が希薄になりやすい傾向がある。利用者と職員の間にアロマタッチプラクティショナーが新たな風を吹き込む可能性が見出された。今後の継続も決定している。
▼2011年5月の実施風景

【高齢者施設でのQOL向上のためのアロマテラピーの貢献についての研究】
期間:2011年9月~2012年3月
大学・医療法人との共同研究が始動。ケアワーカーによる実践をサポートし、感情の健康、肉体の健康、皮膚の健康におよぼすアロマテラピーの影響の経過観察をおこなう。
※経過と結果ついては後日のコラムで報告予定。



































